astre −星−


05


「おい、この宿の娘を連れて来い。」
リーダー格の男に言われて部屋の中にいた手下の男が人質に向かって叫んだ。
「この宿の娘は誰だ!出てこないと・・・。」


チャキ


「こいつの頭をぶち抜くぜ。」
男はそう言って子どもの頭に向かって銃を構えた。
「さぁ!でてこねぇと、、、」
「あ、あたしです!!!」
男の言葉の途中でキョウが立ち上がった。
「あんたか。リーダーがお呼びだ。さっさと行け!」
「ッ!」
キョウは男が叫んだ声にビクッとなってリーダーの男のところへ歩き出した。
銃を構えていた男も自然とキョウが歩いて行ったほうへ視線を向けた時、


バキッ


銃を蹴り上げられ、床へと叩きつけられていた。
「くそッ!!!テメェ!!」
「余所見してるあんたが悪いんだよ。」
そう言ってリョウは男が持っていた銃を男の頭に向けて構えた。
「キョウさん早くこっちへ。」
「う、うん!」
リョウに言われてキョウは急いで人質がいるところまで戻ってきた。
周りにいた他の男達はリーダー格の男に言われて他の部屋に人がいないかどうか見て回っているので不在だった。
人質の周りにはこのそこへリーダー格の男が様子を見に戻ってきた。
「おい、何やってんだ、早くし・・・。ほぅ。」
「こいつの頭をぶち抜かれたくなかったら人質を解放しろ。」
「・・・・・・・・仕方ねぇな、そいつも俺の大切な手下なんでね。おい、お前等外に出ていいぜ。」
リーダー格の男に言われて人質となっていた人たちは一目散に外へと出て行った。


















「中はどうなってるんだ?」
リーダーの男がキョウが中々来ず、中に引っ込んでから音沙汰がなくなってしまった。
その時、中から親子連れやお年寄りなど人質になっていたであろう人たちが出てきた。中にはキョウの姿もあった。
「「キョウ!!!!」」
宿屋の夫婦がキョウの姿を見つけてキョウの元へ走った。
「お父さん!お母さん!」
キョウも両親の姿を見て抱きついた。
「あぁ!キョウ!よかった!!」
「無事でよかった!でも、なんで出てこれたんだ?」
父親が不思議そうに言うとキョウは、はっとなった。
「そうだ!手塚さん!!手塚さんはいますか?!」
キョウがそう叫ぶと手塚がキョウの元へやってきた。
「俺が手塚だが。」
「手塚さん!!!リョウからの伝言です!『中に犯人はリーダーを含めて5人。銃声が聞こえたら突入して。』だそうで
す!!」
「!!・・・わかった。」
そう言って仲間の下へ戻っていった。
「手塚、キョウさんなんだって?」
不二が1番はじめに手塚に聞いた。
「リョウからの伝言だそうだ、『犯人はリーダーを含めて5人。銃声が聞こえたら突入して。』。・・・ッ!」


ドンッ!


手塚が全員にリョウからの伝言を伝えたとき、宿の中から銃声が聞こえた。
「よし!行くぞ!」
「「「「「「「「おぅ!!!」」」」」」」」















「人質は逃がしたぞ。さぁ、お前はどうする?」
「俺1人ならどうにかするさ。」
(キョウさん、国光に伝言伝えてくれたかな。)
さっきリーダー格の男が橘たちと話してる間にリョウはキョウに伝言を頼んだのだった。



―俺が人質を逃がすからキョウさん手塚っていう人に伝言してくれる?
―え?でも、リョウは?
―俺は残っとかないと。全員逃がしてはくれないだろうから。
―リョウ助かる?
―キョウさんが伝言してくれたら。
―・・・・わかったわ。
―じゃあ、『中に犯人はリーダーを含めて5人。銃声が聞こえたら突入して。』って伝言して。
―わかったわ。必ず伝言するわ。
―この宿の娘は誰だ!



(早くしないと俺が持たない・・・)
「リーダー、他の部屋に誰もいませんよ・・・っお前!!」
そこに他に人がいないか探しに行っていた男達が戻ってきた。
「動くな!」

ドンッ!

「動くとこいつの頭をぶち抜く。」
「くそッ!」
動こうとしたその男の足元に向かって1発発砲した。
(今の合図になっちゃったかな。まぁ、いいか。)
「お前・・・。」
「・・・何?」
リーダー格の男がリョウに向かって話しかけてきた。
「お前、俺達の仲間にならないか?」
「え?」
「戦いなれしてるしな。お前が仲間になってくれたらこの町から出て行こう。」
「「「リーダー!!!」」」
「は?!」
リーダー格の男の突拍子も無い言葉にリョウが驚いていると、チャンスとばかりにリーダー格の男がリョウを突き飛ば
して馬乗りになって銃を向けてきた。
「なーんてな。」
「チッ!」
「まぁ、仲間になってほしいのはかわんねぇけどな。」
「リーダー、すいません。」
「いいって。それより、こいつの仲間の到着だ。」












宿の中に入ってみるとリーダー格の男に馬乗りになられていて銃を向けられているリョウが見えた。
「「「「リョウ!!」」」」
最初に入ってきた不二と菊丸と大石、手塚の声が重なった。
「おっと、動くとこいつが死ぬぜ。」
「くそっ!」
その時、リーダー格の男が手塚たちのほうへ向いてる隙にリョウはリーダー格の男を蹴り上げ、脱出した。
「なッ!!」
「「「「リョウ!」」」」
「はぁ、皆遅いっすよ・・・。」
そう言って崩れ落ちた。
「しっかり!」
崩れ落ちたリョウを抱きとめた不二が声をかけるが意識がないのか返事がなかった。
「海堂、リョウをよろしく。」
「は?」
「僕はこいつらを始末しなくちゃいけないから。」
ニッコリと後ろに黒いオーラが見える不二に言われてしまうと海堂は反論できず、コクコクと頷くことしかなできなかっ
た。











































「ありがとうございます。」
「いえいえ。お礼はぼくらじゃなくてリョウに言ってください。」
「はい。でも、皆様のお陰でもあります。ありがとうございます。」
宿の主人が手塚たちに礼を言うと不二はにっこり笑ってそう言った。
「主様たちも駆けつけてくださってありがとうございます。」
「いや、俺達はあまり何もしてないからな。」
「そんなことはありません。前の主様だったら駆けつけてさえくれません。ありがとうございます。」
「橘、俺達の部屋へ来てくれないか。」
「・・・ああ、わかった。」
主人の話が終わりそうになかったので、手塚は橘を誘い、強引に話を終わらしたのだった。












「リョウはどうだ?」
「寝てるよー。」
手塚は部屋に入るとまずリョウの枕元にいた菊丸に声をかけた。
「そうか。橘、改めて紹介しよう。こいつらは俺の副官の大石秀一郎、参謀的な乾貞治、魔導師の不二シュウ、剣士
の河村隆、僧侶の菊丸エイ、武道家桃城武、魔法使いの海堂カオル、それからリョウだ。」
「ん?こいつは役職はないのか?」
「ああ、ちょっとわけありでな。」
「そうか。」
「本題なんだが、お前も試練の洞窟へ向かうのか?」
「・・・いや。俺はこの国を治めるので手一杯だからな。」
「そうか。」
「・・・・ん。」
手塚と橘が話していると寝ていたリョウが目を覚ました。
「おちびー、大丈夫かぁ〜?」
「ん。大丈夫。」
「いきなり倒れるからびっくりしたよ。」
菊丸の隣にいた不二もリョウに声をかけた。
「ごめん。」
「いいんだよ。」
「あ!ねぇ、あいつらは?」
「ん?あいつら?あいつらなら倒したよ。」
「え?倒した?」
「うん、倒した。」
にっこり笑って「倒した」という不二に全員が一歩引いてしまった。
「そ、そうなんだ。」
リョウも冷や汗を流して答えた。不二以外の全員の顔が少し青ざめていた。その時、リョウが見知らぬ人物を見つけ
た。
「あ、ねぇ。あの人誰?」
「ああ。彼はこの国の主の橘だよ。」
リョウがこっちを見ていることに気付いた橘はリョウのもとへ行って挨拶をした。
「はじめまして。俺はこの国の主の橘だ。」
「はじめまして。リョウっす。あ、橘さん。さっきの奴等のリーダーに会えないかな?」
「え?」










































「リョウってば何考えてるの?さっきの奴等のリーダーに会いたいなんて・・・。」
不貞腐れたような顔をしたシュウが手塚に文句を言った。
「俺に言われても知らん。」
リョウが犯人達のリーダーに会いたいと言って橘に連れてきてもらうのに、手塚、不二、菊丸、大石が着いてきた。大
石は菊丸に半ば強制的に連れてこられたが・・・。
「ほーんとおちびってば何考えてんだろー?ねぇ、大石。」
「さぁ?俺に聞かれても・・・・。」
リョウが先に橘と歩いてるため不二は手塚に菊丸は大石に文句を言っていた。
「ここだ。」
二人が文句を言っている間に着いたようだ。
「俺は屋敷に帰るが、犯人を外に出さないでくれよ。」
と笑って橘jは自分の屋敷へ帰って行った。







「・・・!」
犯人のリーダーだった男が牢屋の前に誰か来たことに気付いて顔をあげると、そこにはさっきまで人質にとっていた
人物だった。
「お前・・・。」
「ねぇ、なんで宿屋なんて襲ったの?」
リョウのいきなりの質問に男は少しびっくりしてから答えた。
「・・・・・・・別にどこでもよかったんだよ。偶々目についたのがあの宿屋で、宿屋の親父が出て行くのが見えたから
な。」
「ふーん。あんなことして今の主様がいなくなるとでも思ったの?」
「今は冷静になってるからおもわねぇけど。あの時は今の主が憎くて仕方なかったのさ。まさかお前みたいに強いや
つがいるとは思わなかったけどな。」
「前の主様のほうがよかった?」
「いや、別にどっちでもいいさ。前の主の愛人が俺の彼女だったのさ。まさか二股かけられてるとは思わなかったけど
よ。で、今の主が前の主を襲撃した時に殺されたのさ。ま、今となっちゃあ二股かけられてたんだから別にいいけど
よ。もう好きでもなんでもねぇさ。」
「そうなの?」
「ああ。」
「じゃあ、今の主様を恨まないでよ。」
「そうだな。」
「それと、オレ、あんたの仲間になんかならないから。」
「ふ、そうかよ。」
「うん、あれがオレの仲間だから。」
そう言ってリョウが指差した先には手塚、不二、菊丸、大石がいた。
「あいつらが相手じゃ俺は敵わねぇな。」
と男は笑いながら言った。
「じゃあ、それだけだから。」
「あ、ちょっと。」
行こうとするリョウを呼び止め顔を近づけるように言った。
「何?」
不思議そうに言うリョウに男が尋ねた。
「お前名前なんて言うんだ?」
「・・・リョウ。」
「リョウか。おい・・・。」
「な・・・・・・ッ!」
何?と言おうとしたとこで男は掠めるように口付けをしたのだった。
「なッ!!!!!//////」
「俺、お前のこと気に入ったから。いつでも帰って来いよ。」
「ッッッバッカじゃないのッ!!!!!////」
そう言い捨てて手塚たちのもとへ走って行った。











「国光ッ!!帰ろう!!」
真っ赤な顔をして帰ってきたリョウに手塚は無表情で答えた。
「リョウ、あいつを殺してきていいか?」
「えッ?!」
「僕も。」
「俺も。」
「ちょっと、お前等!落ち着け!」
暴走している3人を大石が必死で押しとどめるが効果がなかった。
「ちょ、ちょっと、国光!シュウにエイもどうしたの?」
「どうしたの?じゃないよ!!リョウ!!あいつは今してはいけないことをしたんだよ!!」
不二がものすごい勢いでリョウに言うがリョウは困惑するだけだった。
「シュウ、なんのこと?」
「何って、今キミにキスしたでしょッ!!」
「ッ!!!!!/////ちょ、シュウッ!!」
「おちびにキスするなんて制裁を与えないといけないにゃぁ〜。」
「エ、エイもッ!!////」
「俺は胃が痛いよ・・・。」
「だ、大丈夫?」
「ああ。それより、リョウ。手塚を止めてくれ。」
「え?」
大石に言われて手塚を見ると、男のほうへ向かって歩いていた。
「ちょ、ちょっと、国光!!」
「なんだ、リョウ。」
「殺しちゃだめだよ!それより帰ろうよ!」
リョウが必死になって言うと国光は少し納得していない顔をしながら頷いた。
「仕方ない。リョウがそこまで言うなら。おい、お前等帰るぞ。」
「仕方ないね。」
「ちぇー。」
3人の言葉にほっとしたリョウと大石だが、5人が出て行こうとした時に男が叫んだ。
「オイ、リョウ!!いい女なって帰って来いよ!!
「「「「えッ?!」」」」
「うるさいッ!!」
リョウが男に叫び返して建物を出るが、4人は男の聞き捨てならない言葉があった。
「ねぇ、リョウ。キミって女の子だったの?」
「へ?・・・うん。あれ?言ってなかったっけ?」
「「「「聞いてない!!」」」」
4人の叫びが町に響いた。